訳の分からないタイトルだが、某曲名のオマージュである。
さて、特許制度と製薬業界というのは切っても切り離せない関係にある。薬剤に係る特許は莫大な利益を生み出すため、どんどん新しい判例が出て、議論も活発な分野で題材にされやすい。だから弁理士になって実際に薬剤を扱うかどうかは別として、弁理士試験には薬剤に関する特許の問題が頻繁に出題される。
そしてその場合、なぜか抗がん剤が絡められることが多い。
・副作用の強い抗がん剤に特許権を付与することの是非
・既知の物質に抗がん作用を見出した場合に発明となりうるか
・一定の確率でしか効果のない抗がん剤は「発明」の定義にあてはまるか
・抗がん剤を共同開発した場合の特許を受ける権利の帰属
・抗がん剤に係る特許が厚生労働省の処分を受けていた場合の存続期間の延長
…など枚挙に暇がない。
例えば、「この抗がん剤を使用すると副作用は大きいが、劇的な抗がん作用がある。」などと空々しいことが問題文に書かれている。それに対して、「極めて副作用の強い抗がん剤は、人体に重大な障害を与えるおそれがあるため公序良俗に反し、公衆衛生を害するため、拒絶理由になるようにも思える(特許法32条、49条2号)。しかし…」などとこちらも白々しい回答を書くわけだ。
しかし、そんなときは文章を書きながら、「そんな奇跡的な抗がん剤があるなら俺に打って欲しいもんだよ。何が公序良俗違反だよ。机上の空論ばっかり並べやがって。この問題を作った奴はクズだ。問題を作成する以前に、人の心を勉強してこい。嬉々として軽々しい気持ちで問題に出しやがって。お前も一度抗がん剤を打ってみるか?抗がん剤の副作用に苦しみながら、効果がなかったときの絶望感を味わってみろよ。」とありとあらゆる罵詈雑言に心の中が支配される。だから、予備校の論文の答練でも、抗がん剤が絡められた問題が出たときは、心が乱されて、大抵点数が低かった。
だから本試験でも出ないことを願っていた。
そして幸いにも本試験では出なかった。
だから受かったのだろうな…と未だに思う。
でも何なんだろう。弁理士試験での抗がん剤に対するこのぞんざいな扱いは。製薬に関する問題だと何にでも使えるワイルドカードみたいな扱いになっている。「抗がん剤」ならどんな有り得ない前提条件でも出題が許容されているのもおかしな話だと思う。
しかし、正直、こんなところでまで抗がん剤との付き合いが続くとは思わなかった。抗がん剤とのお付き合いは、もうこれで最後にしたいものだ。