ようやく遺言書を書き終えた。
ずっと心に引っかかっていた仕事が終わって、肩の荷が下りた気分だ。
一言一句間違えることなく長文をボールペンで書く必要があるので、それなりの労力がかかる作業だが、弁理士試験の論文で鍛えたこともあり、一発で間違えることなく書き上げることができた。残念ながら肝心の弁理士資格は使われることなく終わりそうだが、こんな所で最後の最後に役に立ったというわけだ。
遺言を書く便箋にマッチするボールペンを探す作業は、弁理士試験時代に論文を書きやすい万年筆を色々楽しみながら探していた頃を思い出させた。あの頃はまだ希望を持って生きていたのだなぁと、懐かしく、感傷的な気持ちになった。
さて、肝心の内容は、行政書士法人に頼んで監修してもらったので、法的効力には問題が無いはずだ。もっとも、僕は弁理士を持っているから、行政書士でもあるので、自分で自信を持って書けばいいのだが、さすがに民法実務にはさほど強くない。
書いてしまってすっきりしたという気持ちもあるが、僕が現世に頑張って留まる必要もなくなった気がして、いつでもあちらに行きそうな気分である。
折角の遺産だが、この度の暴落で資産が大分目減りしてしまった。
あの世に持っていけない金を気にしても仕方がないのだが、やはり腹は立つ。
まだこの世に未練が残っている証拠なのだろう。
そう、三途の川の渡し賃だけ残っていればいいのだ。