この辺りから少し体調が楽になってくる。
いつものクールでは車で帰宅している日だから、当然と言えば当然なのだが。今回は炎症を起こしたため入院期間がかなり延び、いつもより変則的な退院となっている。
さて、朝起きて病室のブラインドを開けると、窓の外にカゲロウがへばりついていた。
昨晩は強い風雨だったので、流されてここまで飛んできたのだろうか。僕が入院している階はそれなりの高層である。遠路はるばるこんなところまで流されてきましたね、お互い上手く行かない人生ですな、と自らの境遇と重ね合わせて親近感が湧く。
しかし、ピクリとも動かないので、てっきり窓に当たった時の衝撃で死んでしまったかと思っていたが、何と夕方頃に脱皮していた。こんな場所でも何としてでも生きようとする生命力の強さに、感動を覚えた。
カゲロウの寿命は非常に短いということは知っていたものの、脱皮のことはよく知らなかったが、幼虫時代は一般に脱皮回数が多く、通常でも10回以上、時には40回におよぶものもあるそうだ。彼もまだ道の途中なのだろう。
僕もこんなところでくたばるわけにもいくまい。