世間では台風上陸が騒がれているが、我が病室も穏やかではない。
ついにカトリーナ級のイビキストが上陸したのだ。
本日から大部屋に入院した患者のことである。昼寝のイビキでで何となくヤバいのではないかと警戒していたが、想定を遥かに超える酷さであった。今まで様々なイビキストと遭遇してきたが、今回は史上最悪の災害級である。
この酷さを文章で伝えるのは難しいが、皆さんも今まで遭遇したイビキストを数人想像して欲しい。それらを全て足して、さらに5を掛けたくらいの酷さである。よくもまぁ、これだけバリエーションのあるイビキを掻けるものだと感心してしまうほどだ。一定のリズムからのサビよろしく絶叫に始まり、高音から低音まで、変則リズム・変調もお手の物、まさに七色のイビキである。
僕はノイズキャンセリングイヤホンを着用して、愛聴盤であるmyBloodyValentineのLovelessを聴きながら心を落ち着かせつつ、何とか眠れそうであった。しかし、防衛手段を持たない別の患者さんが堪りかねて、ナースステーションに陳情に行ったようで、イビキがうるさい、と看護師さんに度々起こされていた。
多少は病気のせいもあるかもしれないし、本人に悪気はないだろうから責めるのは酷かもしれないが、それらを差し引いても余りに酷すぎると思う。ヒトとして公共の場に出してはいけない最低限のレベルはあるはずだ。もはや獣である。
これからこの獣…もとい患者と1週間過ごすのか…と絶望していたが、何と幸いにも個室が空きそうとのこと。心底助かったと思った。まさに天祐である。
大部屋の他の患者さん、申し訳ないが僕はこの大災害から逃げる。無事を祈る。
さらばカトリーナ、二度と出会わないことを願う。