30代がん闘病記

2014発病・入院 → 2016転移・再入院・離婚 → 2018再出発 → 2022再々発 → 2023入院

2022/2/26 所詮は人事

タイトルに前回と同じく「人事」を含むが、今回は「ひとごと」と読ませる。

恥ずかしながら、僕は病気の最初の頃に、その「悲劇的な境遇」で世間の同情を買えると思っていたフシがあるのは事実だ。しかし、それっぽく悲しんでくれる人もいるけど、その大部分はポーズであることを僕は知ってしまっている。悲しむのは一瞬だけで、数日後には笑いながら酒の肴になるような世間なのだ。

別にそれが残酷だと言っているわけではない。僕だって、仮に街頭でウクライナ情勢についてインタビューされたら、表面上は悲しむコメントをするだろうが、そんなものは所詮はポーズで、その裏では、株の損失だったり仕事への影響だったり、そんな自分本位のことを考えたりするだろう。そんなもんだ。自分の身に起こった悲劇だけが、世間の憐憫の対象となるなど、そんなことは有り得まい。

 

自分の身は自分で守る必要がある。ドラマよろしく、窮地で誰かが救いの手を差し伸べてくれるなんて考えてはいけない。昇進の話だって、表面的にはめでたい話ではあるが、タイミングが悪すぎる。僕を文字通り「死ぬまで」使い潰して、使い捨てるつもりなのかもしれない。みんな他人がどうなろうと心底「人事」なのだ。

そして、本当に心配してくれる人との関係だけを大切にしていけばいいのだ。

2022/2/24 人事が全て

半沢直樹よろしく「銀行は人事が全て」ではないが、僕が勤務している重厚長大な会社も似たようなものである。この時期になると、およそ関係のない人までがそわそわとして、予想屋のように人事で盛り上がっている。

 

一方の僕はどうかと言えば、がんの再発のことは上層部に伝えてあったため、降格までは既定路線であった。中途採用してもらって再発なんか洒落にもならんよなぁ、と思いながら仕事をしていたところ、突如の上司からの呼び出し。やはり来たか。

「クビにならんかったら御の字やな…」と会議室に向かい、内示を受けたところ…なんと昇進を言い渡されたのである。

内示を受けた瞬間、思わず「正気ですか?」と言ってしまった。

失礼極まりないが、偽らざる本音だ。

 

がんのような病気で恐ろしいのは、金銭面のやりくりと、長期に渡る闘病での世間との断絶である。僕は幸いにして保険などで金銭的に苦しむことはない環境を構築できているため、世間との断絶で社会的に死ぬのが最も恐ろしい。この度、僕は引き続きどちらも享受できる「幸運」に恵まれたのだ。

不思議なもので、病気になると、全ての当たり前の出来事を健常者の数倍の感度で味わうことができる。病気になった数少ない利点であろうか。

2022/2/20 5年振り3回目

今までは知人には病気の連絡をしていたが、今回は特に連絡もしないことにした。親しい人にはこのブログも教えているし、問題ないだろう。

正直なところ病気の連絡をされても、どういう反応したらいいのか困るだろうしね。ただでさえ僕は3回目の発病なんだから。5年振り3回目とか甲子園じゃあるまいし。仮に僕が連絡せずに死んだところで、風の噂で広がっていって、ちょっとだけ親しかった人の心を一瞬だけ乱して、それで終わり。「ああ、そんな人いたね」と。そんなもんだ。

これは別に世の中の薄情さを呪っているわけではない。僕自身だって、ちょっとした知り合いが死んだところで、たとえ昔親しくしていたとしても、同じような反応をするだろう。結局、人は一人で死んでいくのだ。

 

文面だけ見ると陰気で後向きな文章に見えるかもしれないが、これはこれで病気に対する、僕のそれなりに前向きな決意表明でもある。昔からの読者の方なら、分かってくれるだろうか。

今までだって一人で乗り越えてきたんだから、今回もきっとやれるさ。

2022/1/27 今後の方針

僕のブログのタイトルは、その出来事があった日の「月日」だけをいれるのがお決まりになっていて「年」は入れていなかった。というのも理由があって、ブログの書き始めのときは、1年で全てが決すると思っていて、完全快癒か死ぬかで、このブログを終わらせるつもりだったのだ。まさか、6年にも渡ってブログを書くことになろうとは。

 

そして、まだこのブログは続きそうである。

PET-CTの結果は、やはり再発と転移の疑いありとのことだった。しかし、陽子線も放射線も放射線量の上限に達しており、これ以上当てることのできない僕には、特定の効果的な治療ができない。

よって今後は、免疫力を向上させ、がんの根絶を目指すという治療方針となった。免疫療法というヤツだ。本庶教授がノーベル賞を取ったオプジーボを3週間に1回、定期的に打つことになる。今までの積極的な治療とは違い、どちらかと言えば消極的な治療になるのかもしれない。(因みに1回当たり15万円と非常に高価な薬だ)

 

今日からできることとして、完全禁酒をすることにした。今まで何かの理由をつけて結構飲んでしまっていたのだけど、何があっても飲まないことにした。僕は過剰な禁欲をしてまで、長生きはしたくない、というスタンスだったが、今回ばかりは話が別だ。生き死にが掛かっている以上、少しでも免疫を向上させるように努めるべきだろう。

この先はどうなるかは全く分からない。

まさに神のみぞ知る。