30代がん闘病記

2014発病・入院 → 2016転移・再入院・離婚 → 2018再出発 → 2022再々発 → 2023入院

2023/7/12 日課

朝起きると鼻うがいをするために洗面台に立つ。

鏡など見たくもないが、自分の顔が否応なしに目に入る。

抗がん剤と放射線で抜け落ちた公家のような眉毛、怪談話に出てきそうなほど腫れあがった左瞼、焼畑農業の跡地のようなハゲ頭、休耕地に所在無げに生えてきた雑草のような髭、首から下の上半身は田舎で見る星空のように発疹で埋め尽くされている…これに加えて鼻水が垂れないように両鼻に綿球を詰めている。

まるで棺桶の死体がそのまま甦ったようで、自分でも笑ってしまう。

 

鏡の中の自分の目をじっと見つめながら、

「お前は、本当に、よく頑張っている」
「お前は、本当に、よく頑張っている」
「お前は、本当に、よく頑張っている」

と何回も唱える。

 

あえて不適切な用語と承知した上で書かせてもらうが、僕はもう自分が「キチガイ」の領域に突入しているのではないかと疑っている。本当に独り言が多くなった。色々な感情が突然あふれてきて、打ち消そうとして無意識で大声を出してしまう。

しかし、一人でいるので客観的に自分が正常なのかを判断する手段がない。ブログの文章をAIに読ませたところ、幸いにも論理的に破綻していない文章は書けているようだ。だからと言って僕が精神的に正常である理由にはならないのだが。

マンションの高層階に住んでいなくて本当に良かったと思う。衝動的に飛び降りてしまう可能性を完全に排除できないからだ。

 

鏡の前での言葉に続くべき言葉は分かっている。

「でもお前の人生はもう終わりなんだ、諦めよう」

これを言ってしまうと言霊が成就しそうでグッと呑み込んでいる。