30代がん闘病記

2014発病・入院 → 2016転移・再入院・離婚 → 2018再出発 → 2022再々発 → 2023入院

8/31 歯車

最近は更新頻度も少なく、申し訳ありません。相変わらず定期的に訪れて頂いている読者の方も多いようで、有難い限りです。少し古い話ですが、今年の8/31に思ったことを書きかけで、忙しさにかまけて放置していたのですが、一応完成させてみました。

 

突然だが、歯車は素数の組み合わせでできている(正確には互いに素だ)。各々の歯車に悪い箇所があった場合、例えば公約数のある40と50の組み合わせなら、最小公倍数である200回転に一度出会うことになり、高い頻度で悪化が促進される。一方で、例えば互いに素である40と51の組み合わせなら、出会うのは2040回転に一度であり、延命することができるといった具合だ。

自然界にも同じような仕組みはあって、素数セミも有名だろうか。同じ地域に、17年あるいは13年に一度しか発生しないという規則性を持つセミのことだ。即ち、最小公倍数の221年に一度しか同時に地上に出ることはないため、お互いに資源を食い潰し合うことが少ないというわけだ。

そして、この日になると思い出す。天国のように青く抜けた空と、地獄のように暑かった、3年前のあの退院の日を。あの日のセミは、退院を称える讃美歌のように、これから僕が味わう絶望を暗示する鎮魂歌のように、鳴いていた。

  

あの退院後、僕は離婚をすることになった。普段は離婚について特に思い返すこともないし、別に後悔もない。でも、けたたましいセミの鳴き声を聞くと、ふとしたタイミングで色々と思い出すことがある。思い返せば、3年前の今頃は、お互いの歯車の悪い部分が重なりに重なり、もうどうしようもなかった時期だったのだろうと思う。

今の僕はボロボロな歯車一つでコロコロと転がっている。上っているのか、下っているのかは、よく分からない。今はできることを淡々とこなしていくしかない。