母親の一周忌を終えてきた。
僕の実家はもう無いので、前日に新幹線で移動し、寺の近くのホテルに前泊することにした。体力があれば当日の往復で大丈夫な距離だが、今の僕に無理は禁物である。
天候が不安定な時期だったが、幸いにも当日は天候に恵まれた。1年も経つと法要にも悲壮感はなく、何とも和気あいあいとした雰囲気である。今の僕の唯一の救いは、親戚が皆、僕のことを心配して気に掛けてくれていることである。
1年前の49日法要は、抗がん剤の影響が強く残っており、禿げ上がった頭で頭痛に耐えながら、法要の進行も息も絶え絶えだったが、今回の一周忌はそれなりに体力も戻り、髪も生えそろった状態で進行することができた。
自分の体力と精神力が少しずつ回復しているのが分かる。病気は良くも悪くも変化がなく安定しており、1~2年で死ぬということは無さそうだ。一周忌も終わり色々と区切りがついたので、会社への復職を検討している。いつ死ぬか分からない以上、食い扶持を稼ぐのも必要であるし、何より家族という大きな繋がりを失った僕にとっては、会社を通じてでも社会的な繋がりを回復をすることが大切だ。
無事に全員を見送り、新幹線で帰路に就いた。車窓から見慣れた博多駅が遠ざかっていくのを眺めていると、何とも言えない寂寥感に襲われる。帰るべき実家が無くなってしまうというのは何とも寂しいものである。
誰もいない家に帰ると、布団に倒れ込み、泥のように眠った。